一人親方に税理士が必要になる場合とは?費用と依頼するメリット・デメリットも解説
一人親方が経営をするなかで、実際の現場業務はもちろん、確定申告や毎月の経理業務も行わなければなりません。しかし、すべての業務を一人でこなすのには、時間と労力がかかります。
そのため、税理士に依頼しようか検討している方もいるでしょう。
そこで、どのような場合に一人親方に税理士が必要なのかに加え、依頼するメリットやデメリットを解説します。費用相場もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
一人親方に税理士は必要?
そもそも一人親方に税理士が必要なのか、疑問に思われている方もいるでしょう。一人で業務をこなしていることから、売上もそこまで多くはなく、税理士に頼むほどではないと考えている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、税理士とはどういった役割の人なのか、一人親方に税理士が必要なケースについて詳しく解説します。
税理士とは
一般的に税理士とは、経営するうえで必要な税務手続きを代行してくれる役割を担っています。税務署や自治体に対して届出を出したり、提出する書類の作成の代行をしてくれたりします。
一人親方の場合は、開業届や確定申告書類の作成が該当するでしょう。そのほか、顧問契約していれば、税務や節税に関する相談にも乗ってくれます。
一人親方に税理士が必要な場合
税理士の役割を理解できたものの、税理士がどういったケースで必要なのか疑問に思われている方もいるでしょう。
ここでは、一人親方に税理士が必要な具体的なケースを詳しく紹介します。
年間売上が1000万円を超える
1年間の売上が1,000万円を超える場合は、税理士に依頼することをおすすめします。売上が1,000万円を超えると、免税事業者から課税事業者となり、消費税の申告が必要となります。
消費税の申告には、専門的な知識が必要に加え、適切に処理していなければ、申告漏れにつながるリスクがあります。また、売上が1,000万円を超えている一人親方の場合は、税務調査の対象になるケースも少なくありません。
税務調査とは、適切に会計処理されているかを税務署に徹底的に調べられるものであり、しっかりと対応しなければ、想定外の税金を支払わなければならないこともあります。
しかし、一人で対応するのには限界があり、税理士と相談して対応することが大切です。売上が1,000万円を超えたタイミングで、税理士への依頼を検討することが必要になるでしょう。
忙しくて作業時間がない
一人親方の場合は、日々の業務に加え、経理や会計処理など、さまざまな業務を自らが担当しなければなりません。しかし、売上が増えれば増えるほど、通常業務だけでなく、税務や会計業務も増加していく傾向があります。
日々の業務に追われるなかで、税務や会計業務に割ける時間が減少し、期限内に適切な処理を行うことが難しくなるケースも少なくありません。
売上が増加し、忙しさが増すにつれて会計業務に手が回らなくなった場合、税理士に相談することが大切です。
税務に関する知識がない
一人親方といっても、通常業務だけをこなせばよいわけではなく、帳簿付けや確定申告などもすべて自分で行わなければなりません。
しかし、帳簿付けなどの会計業務には、勘定科目を選択するなど、簿記や会計に関する知識が必要となります。帳簿付けや確定申告といった会計業務には、勘定科目の選択や簿記・会計に関する知識が不可欠です。
また、確定申告は税金に関する知識も必要とされます。そのため、税務に関する知識が不足している一人親方は、早い段階から税理士に相談したほうがよいでしょう。
一人親方が税理士を依頼するための費用
一人親方が税理士に依頼したほうがよい理由は理解できたものの、費用が高ければ、経営を圧迫してしまうため、躊躇してしまう方もいるでしょう。
また、一人親方のなかには、税理士と聞くと費用が高いイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、顧問税理士を依頼する際の費用相場について解説します。
顧問費用の相場
顧問税理士の費用は、売上によって異なります。売上が1,000万円未満の一人親方であれば、月額費用は10,000~30,000円ほどが相場です。
しかし、税理士によっては記帳代行に別途費用がかかったり、確定申告代行についても追加で費用がかかったりするケースも珍しくありません。
そのため、すべての税務、会計業務を税理士に依頼するとなると、年間で300,000~400,000円ほどかかることがあるでしょう。
また、自分で仕訳や記帳を行う場合は、その分顧問料金が安くなることがほとんどです。
売上高や訪問回数により変動
顧問費用は、売上高や訪問回数によって変動するのが一般的です。売上高が上がっていくと、経費計算や売上の計算が増えるため、どうしても費用が高くなってしまいます。
また、税理士による訪問や面談の回数が増えるほど、顧問料金が上がっていくでしょう。たとえば、毎月税理士と面談を希望する場合や、確定申告のみの対応を望む場合など、要望に応じて費用は変動します。そのため、具体的な料金は、税理士に直接確認することが必要です。
一人親方が税理士を依頼するメリット
一人親方が税理士に依頼する際の費用感を理解できたものの、顧問料金を支払ってまでもメリットがあるのか疑問に思われている方もいるでしょう。
ここでは、一人親方が税理士と顧問契約するメリットについて解説します。
時間の節約と手間の軽減
税理士に依頼すれば、ほとんどすべての税務や会計業務を代行してくれるため、時間と労力の節約になります。とくに、一人で経営している一人親方の場合は、すべての会計業務を自分でこなそうとすると、本業がおろそかになってしまうこともあるでしょう。
しっかりと通常業務に集中し、売上を伸ばしていくためにも、会計業務や確定申告は、税務のプロである税理士に依頼するほうがよいでしょう。
なお、確定申告には期限があるので、決められた期間内に適切に処理を行い、確定申告書を作成しなければなりません。
仮に通常業務が忙しくなったとしても、期限内に正しく申告できなければ、無申告加算税などが課されてしまう可能性があり、多くの税金を納めなければならなくなるので注意が必要です。
また、期限内に納税できなかった場合は、延滞税が発生するので、余計な納税を防ぐためにも、税理士に依頼することをおすすめします。
会計業務では、正しく帳簿がつけられているかがポイントとなります。とくに経費計算を誤ると、税金額が大きく変わる可能性があるほか、税務署にあとから指摘された場合、追徴課税や重加算税、延滞税などが課されるケースも少なくありません。
そういったミスをなくすためにも、適切な帳簿付けが重要となるため、税理士に依頼したほうがよいといえるでしょう。
資金繰りの相談ができる
経営を行ううえで、資金繰りの計画は重要です。資金がひっ迫すると、企業は倒産に至ってしまう恐れがあります。しかし、資金繰りは、本やネット上の情報だけでは理解しきれないことも多いでしょう。
こうした状況で、顧問税理士が存在することは大きな利点です。税務のプロである税理士に相談すれば、資金繰りの問題に対処するための有益なアドバイスを得られます。専門家の助言により、資金ショートのリスクに直面する前に対策を講じることが可能となります。
また、税理士によっては、融資の相談にも乗ってくれることがあります。銀行や日本政策金融公庫から、どうすれば融資を受けられるのか、事業計画書をどのように書けばよいのかなどのアドバイスをしてくれる税理士もいるため、資金繰りや融資の相談ができるのも、税理士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。
節税効果が期待できる
顧問税理士がいると、毎月の残高を把握してくれていることから、利益が膨れて税金が多くなると分かった段階で、節税対策についてアドバイスをもらえることが一般的です。
また、自分で節税効果があると思って対策したとしても、合法的かつ適切に処理されていなければ、脱税にあたるケースがあり、追徴課税の対象となってしまい、多額の税金を支払わなければならないこともあるため、注意が必要です。
一人親方が税理士を依頼するデメリット
一人親方が税理士を依頼することで、さまざまな恩恵を受けられます。しかし、実際に依頼する前に、デメリットについても理解しておきましょう。
費用がかかる
税理士に依頼するデメリットとして挙げられるのが、費用がかかる点です。税理士もビジネスである以上、どうしても費用がかかってしまいます。
しかし、税務や会計処理は、専門的な知識が必要なことに加え、自分でやるには時間と労力がかかってしまうことから、費用をかけてまでも顧問契約するメリットが勝るといえるでしょう。
税務に関するノウハウが身につかない
税理士と顧問契約すると、ほとんどすべての税務、会計処理を代行してくれることから、自分で帳簿を付けたり、確定申告書を作成したりすることはありません。
そのため、税務に関する知識やノウハウが見に付きにくい点がデメリットといえます。しかし、経営していくうえでは、最低限の税務知識があったほうがよいので、税理士との面談を通して、分からないところを教えてもらうのがおすすめです。
必要書類の共有に手間がかかる
税理士と顧問契約しているからといって、資料をなにも提出しなくてもよいというわけではありません。税理士は、クライアントから共有された資料をもとに、売上や経費の計算を行っているため、資料を共有しなければ一切の計算ができません。
書類を共有するタイミングは、税理士によって異なりますが、基本的には月末締めの翌月末までに提出するといったケースが多いでしょう。そのため、必要書類を用意する手間がかかってしまうのがデメリットとして挙げられます。
お金の動きが把握できない
お金の動きを把握しづらい点も、税理士に依頼するデメリットです。税理士と顧問契約することで、ほとんどすべての税務、会計業務を丸投げすることが可能です。
丸投げすると、お金の動きが分かりづらくなり、現在の経営状況や税金がどれくらいかかるのかが見えにくくなってしまいます。
しかし、一般的な税理士の場合は、定期的な面談を通して、試算表を共有してくれるため、どれくらいの売上があるのか、赤字なのか黒字なのかを、定期的に教えてもらえます。
また、自分が知りたいタイミングで顧問税理士に相談すれば、しっかりと教えてもらえます。お金の動きが気になる方は、定期的に税理士に相談しましょう。
会計ソフトを使う選択肢も
一人親方が税理士に日々の会計や税務業務を依頼することで、自分自身の時間や労力を節約でき、業務に専念できます。しかし、顧問契約を結ぶことで、毎月顧問料が発生するため、売上が少ない段階だと顧問料が経営を圧迫することも珍しくありません。
近年は、さまざまな会計ソフトが販売されており、自分で会計ソフトを使って、帳簿付けや確定申告の作成をすることが可能です。会計ソフトによって、利用料や機能に違いがあるものの、毎月2,000~5,000円程度で利用できるものが多いでしょう。
また、会計ソフトの種類によっては、クレジットカードや銀行口座などと連携できるため、仕入れなどの経費を手入力しなくても、自動的に仕訳してくれるといったものもあります。
会計ソフトには、大きく分けてクラウド型のものと、ダウンロード型のものの2種類があります。予算や使い勝手に合わせて自分に合うものを選ぶことが大切です。
また、一部の会計ソフトには、売上レポートや試算表が自動で作成される機能が備わったものもあります。売上や経費を毎月確認したい方は、機能が付いているものを選びましょう。
税理士に依頼するよりも、会計ソフトを使用するほうが、費用を大幅に抑えられます。しかし、定期的に税務のプロと面談したり、節税対策について相談したりすることはできないため、しっかりプロとコミュニケーションを取りながら経営していきたい方は、税理士を選ぶことをおすすめします。
まとめ
一人親方の中で、税理士に依頼するか悩んでいる方もいるでしょう。売上がそこまで多くはないため、顧問料を払ってまでも税理士と顧問契約する必要はないと考えている方も多いのではないでしょうか。
税理士に依頼すれば、ほとんどの税務業務を任せられるので、通常業務に専念できるといったメリットがあります。しかし、顧問料がかかってしまうことから、無理のない範囲で依頼するかを検討することが大切です。
一人親方労災保険連合会では、一人親方を対象にさまざまなサービスを提供しています。労災番号の発行や代理申請を迅速に行い、料金もリーズナブルに設定されています。業務に役立つさまざまな情報を配信しているため、ぜひ参考にしてください。
投稿者プロフィール
-
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
『建設業界を元気にしたい!』そんな思いで建設業に従事する方々が抱える問題点や悩み事に少しでもお役に立てれば幸いです。
【略歴】
・2011年 某外資系保険会社に入社
・2013年 労災保険特別加入団体の運営を開始
・2016年 大手生命保険会社100%出資代理店へ転身
・2024年 一人親方労災保険連合会【親方プラス】を設立 現在に至る
【趣味・特技】
キャンプ、つり、スキー、サッカー、ゴルフ…etc
最新の投稿
- 労災コラム2024年10月23日一人親方が労災保険に未加入だと危険な理由とは
- 労災事例2024年10月21日【労災事故報告】令和6年9月22日 愛知県内にてクレーン解体作業中に頭部打撲、指を切創したもの
- 労災事例2024年10月18日【労災事故報告】令和6年9月4日 岐阜県内にて首のむち打ち、右鎖骨、骨盤を打撲したもの
- 労災コラム2024年9月12日一人親方とは?個人事業主との違いや両者のメリット・デメリットについてわかりやすく解説