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一人親方が知っておくべき請負契約が成立する正しい契約方法とは

一人親方が知っておくべき請負契約が成立する正しい契約方法とは

建設業一人親方が建設工事を受注するうえで、当事者である元請負人と下請負人との間で対等な立場で契約を締結する必要があります。建設業法第19条第1項でも定められている重要事項を書面に記載し、署名または記名押印して相互に交付しなければなりません。

実際はいい加減な契約が多いのも事実です。のちのち大きなトラブルにもなり兼ねませんので、ここでは建設業の請負契約について正しい契約方法を法律の観点から解説したいと思います。

一人親方が知るべき請負契約が成立する4つの要件とは

請負契約が成立する4つの要件については、「擬装請負、擬装派遣、労働者供給事業」といった違法就労と請負契約について区別するための要件となります。

したがって、職業安定法施行規則4条は、違法とならない働き方の条件として以下①~④の基準を示しています。

これは通称「請負契約成立の4要件」と呼ばれています。

  1. 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上の全ての責任を負うものであること。
  2. 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
  3. 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定された全ての義務を負うものであること。
  4. 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

請負契約は、この4つの要件を満たすことが大前提となりますのでしっかり押さえておきましょう。

所得税法上の請負人の判断基準とは

請負契約成立の4要件は満たしていても支払いを受ける報酬に係る所得区分はどのように判断するのかという問題が生じます。

まずは、請負人(事業者)と労働者(給与所得者)の違いを明確にしましょう。

判断の目安

国税庁消費税法基本通達や裁判事例等から総合的に判断すると次に揚げる事項が判断目安となります。

請負契約

  • 事業に必要な費用は自分で負担している【請負契約】
  • 反復継続して事業を行っている【請負契約】
  • 自己の責任と判断で業務を遂行している【請負契約】
  • 仕事の依頼や清算は「見積書・注文書・請書・領収書」等で行われている【請負契約】

労働契約

  • 使用者から時間的な制約を受けている【労働契約】
  • 社宅の提供を受けている【労働契約】
  • 通勤手当が支給されている【労働契約】
  • 源泉徴収して所得が支払われている【労働契約】

一人親方と元請との請負契約書記載事項

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 請負代金の全部または一部の前金払いまたは出来形部分に対する支払いの定めをするときは、その支払い時期及び方法
  5. 当事者の一方から設計変更または工事着手の延期もしくは工事の全部もしくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  6. 天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  7. 価格等(物価統制令第2条に規定する価格等をいう)の変動もしくは変更に基づく請負代金の額または工事内容の変更
  8. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  9. 注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  10. 注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡し時期
  11. 工事完成後における請負代金の支払いの時期及び方法
  12. 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  13. 各当事者の履行の遅延その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他損害金
  14. 契約に関する紛争の解決方法

建設業法違反となるケース

  • 書面による契約を行わなかった場合(一定の条件を満たせば電子契約は可)
  • 建設業法第19条第1項の必要記載事項を満たさない書面を交付した場合
  • 元請人の指示に従い、請負契約締結前に工事に着手し、工事途中や工事終了後に契約書面を相互に交付した場合

一人親方が請負う小規模工事の場合は注文書や請書でもOK?!

請負金額が130万未満の小規模工事の場合は、下記(ひな形添付)のような「注文書・請書」により契約を締結することが可能です。

ただし、要件を満たす内容のものでなくてはなりません。

必須記載内容

  1. 注文書・請書のそれぞれに、同一の内容の契約約款を添付または印刷する
  2. 契約約款には、建設業法第19条第1項第4号から第14号」にあげる事項を記載する。
  3. 注文書または請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押印する。
  4. 注文書及び請書の個別的記載欄には、建設業法第19条第1項「第1号から第3号」にあげる事項、その他必要な事項を記載する。
  5. 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外については契約約款の定めによるべきことを明記する。
  6. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名または記名押印する。

一人親方が知っておくべき請負契約についてのまとめ

建設工事の請負契約は、当事者である元請負人と下請負人との間で対等な立場で契約を締結する必要があります。

前述したように請負契約が成立するためには4つの要件を満たす必要があり、その目的は「擬装請負、擬装派遣、労働者供給事業」といった違法就労と請負契約について区別するための要件となります。

さらに、所得税法上の請負人の判断基準も満たす必要もありますのでしっかり確認しておくことが重要となります。

また、小規模工事の場合は「注文書・請書」により契約を締結することが可能となります。

元請負人と下請負人との間で気持ちよく円滑に仕事を遂行するために請負契約の方法を双方にしっかり理解することが大切です。

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投稿者プロフィール

一人親方労災保険連合会 浅井淳平
一人親方労災保険連合会 浅井淳平代表理事
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
『建設業界を元気にしたい!』そんな思いで建設業に従事する方々が抱える問題点や悩み事に少しでもお役に立てれば幸いです。
【略歴】
・2011年 某外資系保険会社に入社
・2013年 労災保険特別加入団体の運営を開始
・2016年 大手生命保険会社100%出資代理店へ転身
・2024年 一人親方労災保険連合会【親方プラス】を設立 現在に至る
【趣味・特技】
キャンプ、つり、スキー、サッカー、ゴルフ…etc
 
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