一人親方が必ず知っておくべき請負契約と労働契約の違いについて
建設業界で働く人たちは、様々な働き方(形態)があります。大手ゼネコンや元請建設会社から仕事を請け負う形や会社に雇われて社員として働く、あるいは雇いも雇われもせずに個人で働くなど様々です。
特に建設業界では、社会保険未加入対策における「請負契約」か「労働契約」かの判断が厳しく求められるようになりました。このことにより、仕事を依頼する側(元請)とされる側(下請)双方にて契約の違いを十分に認識する必要があります。
ここでは、建設業法に沿って請負契約と労働契約の違いについて詳しく解説したいと思います。
一人親方であれば民法からみる請負人の判断基準を理解しましょう
「請負」の判断基準について民法第632条では、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定めています。
つまり、請負契約とは「仕事を完成させること」を目的とした契約となり、雇用契約や委任契約(委託契約)とは区別されます。報酬の支払いに関しては、請負人が仕事を完成させ、目的物を引き渡した段階で支払えばよいとされています。(民法第633条)
また、完成した仕事に瑕疵(不完全な部分)が生じた場合は、注文者は請負人に対して修復を求めることができます。
さらに修復に時間がかかるものやそのことにより注文者に損害が発生する場合があるので、請負人に対して修復に変えて損害賠償を求めることもできます。万が一、請負契約の目的が達成されない場合、注文者は契約を解除することができるとされています。(民法第635条)
【補足】フリーランス・事業者間取引適正化等法より
フリーランスすなわち一人親方へ仕事を業務委託する事業者(元請会社)は、発注した物品等(成果物)を受け取った日から数えて60日以内のできるだけ早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払う必要があります。※2024年11日1日以降適用
一人親方であれば建設業法からみる請負人の判断基準を理解しましょう
建設業法における「請負」の基準については、民法の特別法とされていますので、本質的な部分は同じです。
建設業では請負契約を「下請契約」とも代されますが、建設業法第2条では「下請契約」とは、「建設工事を他の者から請け負った建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう。」とされています。
詳しくはこの後で解説しますが、建設業法における「下請契約」は、当事者間で書面交付が必要となります。
【補足】フリーランス・事業者間取引適正化等法により
フリーランスすなわち一人親方に業務委託する事業者(元請会社)は、業務委託をした場合に書面等により、直ちに以下の取引条件を明示する必要があります。※2024年11日1日以降適用
・「業務の内容」・「報酬の額」・「報酬の支払期日」・「発注事業者(フリーランスおよび一人親方の名称)」・「業務委託をした日」・「給付を受領/役務提供を受ける日」・「給付を受領/役務提供を受ける場所」・「(検査を行う場合)検査完了日」・「(現金以外で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項」
【よくある質問Q&A】
一人親方は労働者ではありません。労働契約の内容を確認しましょう
労働者とは、労働基準法第9条で「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されています。
さらに、労働契約法第2条では「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義されています。
よって労働者は、使用者によって雇われて働く者で、民法第623条は「労働者が使用者に対して、労働に従事することを約し、使用者がこれに対して報酬(賃金)を与えることを約する」契約としています。
このように、労働者は賃金を糧として働く者であるため、使用者の指揮命令下において勤務場所や勤務時間を限定され、拘束された中で働くことが求められるわけです。
このような働き方は一人親方ではありません。労働者すなわちサラリーマンとなります。
労働契約5つの原則
労働契約は、労働契約法第3条(1~5)を遵守することが求められます。
【労働契約法第3条】
- 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
- 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
- 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
- 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
- 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
一人親方が必ず知っておくべき請負契約と労働契約の違い まとめ
建設業界で働く人たちは、様々な働き方(形態)があります。
大手ゼネコンや元請建設会社から仕事を請け負う形や会社に雇われて社員として働く、あるいは雇いも雇われもせずに個人で働くなど様々です。
ポイントとしては請負契約と労働契約は、建設業法と民法の両方の観点から判断する必要があります。
実際に建設業として仕事に従事する際には、仕事を依頼する側(元請)とされる側(下請)双方にて契約の違いを十分に認識する必要があります。
正しい契約をすることは、双方にとってトラブルを避けれるとともに気持ちよく仕事に従事でき質の高い仕事にも繋がるのではないでしょうか。
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投稿者プロフィール
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いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
『建設業界を元気にしたい!』そんな思いで建設業に従事する方々が抱える問題点や悩み事に少しでもお役に立てれば幸いです。
【略歴】
・2011年 某外資系保険会社に入社
・2013年 労災保険特別加入団体の運営を開始
・2016年 大手生命保険会社100%出資代理店へ転身
・2024年 一人親方労災保険連合会【親方プラス】を設立 現在に至る
【趣味・特技】
キャンプ、つり、スキー、サッカー、ゴルフ…etc
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