偽装一人親方について解説します!
偽装一人親方というのは、正社員と同じように働いているのに、契約内容だけ個人事業主として働く一人親方のこと。本来一人親方というのは、個人事業主であってどんな仕事を受けるのかや、出社時間などは基本的に自由です。
もちろん現場によって朝礼があったりその現場に合わせて動く必要はあるかもしれませんが、取引先にいただいた仕事以外はこなさなくていいし、上司もいません。
一人親方および個人事業主と社員(サラリーマン)はどう違うの?
一人親方および個人事業主と社員の違いは命令権があるかどうか。個人事業主なのであれば命令権はありません。ですから自由なのです。
そして給料ではなく仕事単位での報酬が支払われます。ですから仕事量に応じて、日当がかかってきます。
報酬ですので、源泉徴収もありませんし、厚生年金にも入れません。さらに雇用保険もありませんし、福利厚生がないのです。
ですから一人親方であれば、その福利厚生分の報酬をもらい、会社員時代と比べると月収も多くないといけません。
出ないと国民保険や国民年金や労災保険を支払うと、その収入が減ってしまうからです。
そして会社側からすると仕事がなかれば、給料を払わなくても言い訳でリスクも背負ってはくれません。
それが個人事業主です。そのかわり得るものが自由です。
上司の言うことを聞かなくてもいいですし、休みにしたい日は自分の裁量で休みにできます。
単価も自分で決めることができて仕事を断ることもできる。
新たな取引先を見つけ仕事を増やすこともできるし、それによって大幅な年収アップも可能。
この条件が個人事業主なのに、契約形態だけ個人事業主にして月収は同じで働き方も同じであればそれは偽装請負ということになります。
ただ本人の同意が得られていれば全て請負で仕事をもらっているだけのことなので、判断が難しい場合もあります。
そう言った場合は仕事が断れるのか、そして別の会社から仕事をいただいてもいいのかなどを確認してみるといいと思います。
なぜ一人親方として偽装するのか
なぜ偽装するのかというと、社会保険料などの福利厚生などの支払いを逃れるためです。
実は月収20万円の正社員を雇うとなると、会社は総額で35万円ほどの支出になります。
社会保険料や厚生年金や労災保険などなどで、高額な諸経費を支払うことになります。
ここで問題なのは、会社はこれをできれば支払いたくないということ。
そしてその詳細を知らない建設会社の社員は、一人親方になることを勧められます。というか偽装的に契約内容を変更するように伝えられるということ。
なぜなら社員としては収入が同じであれば問題ないと思ってしまうからです。
しかし問題は会社は本来35万円支払っていたのに、月5万円上乗せするから25万円にして、一人親方にならないか?と相談するのです。
社員も5万円手取りが増えて、会社も10万円の支払いが減る。
国に支払う額が減っただけでwinwinのように見える。
しかしそもそもその10万円は国が社員を守るために納めさせているものなのです。
例えば年金
社員のままであれば、月額10万円程度もらえる可能性があるのに一人親方のばあいは約7万円しか支払われません。
国民保険にも自分で加入することになり、これまでは会社が半額負担してくれていたので、余計に保険料を支払う必要がある。
つまりあなたの社会保障費を削っているだけであって、会社に支払うお金が減ったのではなく、社員の未来に支払うお金を減らしているだけだということ。
損しているのは国ではなく、一人親方になった社員だということ。しかもそれなのに社員と同じような状況で働かされて、自由もない。
便利な安い労働力を建設会社が作っているということです。
パートからも取り立て強化
厚労省は最近、パートから社会保険料を取りたて強化を始めました。
まだ50人以上の会社が対象なのですが、近いうちにそのような制限もなくなるのは目に見えています。
一人親方が、会社を設立して経理事務等をパートにお願いすると、そこにも社会保険の網がかかるわけです。
少子高齢化の犠牲者にならないこの問題は少子高齢化が進み、現在の年金制度が維持できなくなっていることにあります。
これは少子化を放置した国の明らかな失政なのです。
「年金は世代間の架け橋」というキャッチフレーズももはや少子化の前にはむなしいだけです。
今払っている年金保険料は現在の老人のためであり、次世代はどんどん数が減って、架ける橋(保険料)がないわけですから。
このように国の明らかな失敗の尻拭いを弱い者にも強制するのは、まったく筋違いです。
社員を外注の一人親方にすれば消費税も安くなる?
社員が独立して一人親方として会社と業務請負契約をするようになれば、会社に税金面での大きなメリットがあります。
人件費というのは、消費税の課税仕入れに算入することができません。
したがって会社の経費の中で人件費の割合が高いほど、消費税の納税額が増えます。
ところが業務委託費ならば、課税仕入れに算入することができます。
だから、社員が独立して、業務請負をする一人親方になれば、その業務費依託費は課税仕入れに算入することができます。
つまり、その分だけ消費税が安くなるというわけです。
前項でも触れましたが、会社は、社会保険料や福利厚生費の支出も抑えることができます。
社会保険料と福利厚生費は、大企業でだいたい人件費の30%、中小企業でも20数%くらい(本人負担分を除く)と言われています。つまりこれが、いらなくなるわけです。
一人親方として独立する社員の業務委託費に若干金額を上乗せしてあげても、かなりの経費が削減できるはずです。
※関連記事→ピンハネが横行!?一人親方(子方)が親方に中間搾取されないための対処方法とは
社員の偽装一人親方化とは?
このような状況の下、社会保険料に経営的に耐えられなくなった建設会社が、社員を一人親方に変えていっています。
そうすれば、社会保険料や厚生年金の支払いから逃れることができるからです。
一人当たり10万円の支出カットです。
ある会社での実話ですが大手ゼネコンと直接取引している年商10億以上の優良会社が、所属の職人を正社員にして社会保険ら加入したら、たちまち経常黒字がなくなり赤字になってしまいました。
問題は、一人親方と言いつつ、その実態は社員みたいなものになっていることが問題なのです。
社会保険料をはじめ、人を雇用していると様々な縛り(社会保険料、労働基準法、税金等)がありますが、実態が以前と何も変わらないのにその負担だけを逃れている・・・と言うわけです。
社員が一人親方になることは問題ではない
ただ知っておいていただきたいのが、社員の1人に外注の一人親方になってもらうこと自体は、実は違法でも何でもないのです。
建設業界では独立する職人が多く、一人親方になること自体は問題ではありません。
実際望んで一人親方として独立する職人さんもいらっしゃいますし、そこから組織や会社をつくて年商数十億の会社を作っている人もいるでしょう。
ですから一人親方になることは問題なのではありません。
あくまでも社員と同じ待遇もしくはそれ以下なのに社会保障もなく、同じ権限で働かされていることが問題なのです。
ですから一人親方になることを止めることはありませんので、ご安心ください。
どうすればいいか
一人親方になるなら、今までの生活ができるレベルの収入をしっかりともらうこと。
そして個人事業主の権利をしっかりと知っておくこと。
一人親方になれば社会保障費もしっかりと自分で支払っていかないといけないわけですし、これまでと同程度の収入では、自室の収入は下がります。
ですから独立をするまえにしっかりと単価を交渉する必要があるでしょう。
そして労働管理をされることはなくなると覚えておいてください。
遅刻をしようが何時に現場に行こうが自由です。ただし現場での段取りがあるのでその通りに動く必要はありますが、会社が決める時間ではなくて構いませんし、現場が片付けば自由に帰ってもいい。
タダ働きで他の現場を手伝う必要もないでしょう。
そして作業員名簿になお連ねるようにしてください。
偽装したい場合、会社は労働者名簿にあなたの名前を載せたがりますがそれは間違い。
その方が管理が簡単でお金がかかりません。
もし安い単価ですでに受けていて、断りきれないという場合は仕事の人脈を増やしましょう。
多能工として働くことがでいれば、他の会社から仕事をもらうこともできるかもしれません。
そして一人親方と元請けとのマッチングサイトなどを使ってもいいでしょう。
ただし法人にするのはやめておいた方がいいでしょう。
そう売上高として1000万円を超えたときに初めて法人化するメリットが生まれます。
1000万円を超えた瞬間に消費税を納めることになり、収入が落ちます。
法人化することでそれを1年間先送りできるメリットがあります。
さらに法人税の方が個人の税金より抑えやすいため、節税できるメリットが生まれるのも、1000万円を超えてから。
法人化すれば代表取締役になれるので名刺に描きたいがために法人化する人もいますが、基本的に1000万円超えない限りデメリットの方が多いです。
ただし銀行との信用性は法人の方が上。
お金を借りて事業を大きくしたい場合は、早めに法人化して決算書を3年分用意できるようにした方がいいでしょう。
銀行などを含め、黒字の決算書が数年分あれば信用はとても強くなります。
偽装一人親方 まとめ
偽装一人親方とは、実際には社員のように働いているのに、収入は社員以下で社会保障もなし。
この状態では正直暮らしていけないほどです。
なので問題になっていて、もしそういうことがあなたの働いている会社で蔓延しているのであれば、かなり気をつけておいた方がいいでしょう。
あなたに関係がなくても突然訴えられて会社が傾くなんてこともあるかもしれません。
投稿者プロフィール
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いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
『建設業界を元気にしたい!』そんな思いで建設業に従事する方々が抱える問題点や悩み事に少しでもお役に立てれば幸いです。
【略歴】
・2011年 某外資系保険会社に入社
・2013年 労災保険特別加入団体の運営を開始
・2016年 大手生命保険会社100%出資代理店へ転身
・2024年 一人親方労災保険連合会【親方プラス】を設立 現在に至る
【趣味・特技】
キャンプ、つり、スキー、サッカー、ゴルフ…etc
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