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一人親方が従業員を雇う場合の労災保険の切替手続きについて解説

一人親方が従業員を雇う場合の労災保険の切替手続きについて解説

「従業員を採用する際、何か手続きは必要なの?」

「一人親方の労災保険をどのように切り替えるのか知りたい」

上記のような疑問を抱えている方々も少なくないでしょう。一人親方が従業員を採用する場合、その人自身の労災保険は、中小企業主向けの保険へと切り替える必要があります。

この記事では、一人親方が従業員を採用した際の労災保険の切り替え手続きについて、詳細に説明します。大工として働きたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

一人親方が従業員を雇う場合、どうすればいい?

一人親方として活動してきた人が、一年間で100日以上の日数で従業員を雇うと、一人親方としての定義から外れ、所属している労災保険から離脱することとなります。

そのため、現在加入している保険を中小企業主向けの労災保険に切り替えなくてはいけません。

手続きは、事業主が自ら行政庁で対応せず、厚生労働大臣より認可を受けている労働保険事務組合に事務を委任し、そのうえで労災保険に特別加入します。

一人親方が従業員を採用するときには、健康保険、労災保険、厚生年金保険の加入手続きや、給与の支払い手続きなど、さまざまな対応が求められます。

さらに、労働条件が一貫していることを保証するために、適切な労働条件通知書を作成し、そのうえで採用することが大切です。

中小事業主の労災保険とは

職場や通勤中に発生する事故や病気は、労災保険を通じて補填されます。しかし、労災保険の適用対象は、労働者として雇用されている者です。

この中小企業向け労災保険については、以下の項目を詳しく解説します。

  • 中小事業主等の企業規模
  • 加入対象となるための条件
  • 加入時にかかる費用

中小事業主等の企業規模

年間を通して100日以上労働者を雇用している場合、労災保険への加入が必要となります。労働者の数により、中小事業主等の対象となるかどうかが決定します。

一人親方の特例として、建設業やタクシードライバーといった特定の業種が存在しますが、従業員を雇用している場合にはその限りではありません。

ビジネス規模については、下記の表にて詳細を示します。

業種 労働者数

金融業

不動産業

保険業

小売業

50人以下

サービス業

卸売業

100人以下
上記以外の業種 300人以下

加入対象となるための条件

労災保険への加入を希望する場合、次の基準を達成する必要があります。

少なくとも1名の労働者を雇っている状態

  • 1年における労働者の雇用日数が100日以上
  • 雇用した労働者と同じ業務に携わっている
  • 雇用している労働者の人数が、各業種における規定人数に該当する

以上の条件に該当した事業主は、労働保険の手続きを労働保険事務組合に委託すれば、労災保険への加入が可能となります。

1名以上の労働者を雇用している場合は、労災保険の対象となります。ただし、同居する親族だけを雇用しているケースでは、雇用とは見なされないのでご注意ください。

労働者の雇用日数が年間100日を超える場合もまた、労災保険の対象となります。一部の業種では、100日未満でも一人親方の特別加入制度を利用できる可能性があります。

加入時にかかる費用

労災保険を取得する際、中小企業主は主に2つの費用を払う必要があります。1つは、法律により算出方法が定められた国への労働保険料で、これは選択する事務組合に関わらず一定です。一方、事務組合に対する委託費や組合費、手数料等は、組合ごとに料金設定が異なります。

労災保険への加入には、関連団体への会員登録が必須で、これにより入会金が必要となります。その額はおおよそ5,000円から1万円で、一度支払えば再度の支払いは必要ありませんが、加入期間が経過した後で再度加入する際は、再び入会金が発生する場合があります。

また、労災保険に加入している期間中は、組合費が発生します。加入は年単位で行われるため、その会費も年間分が必要となります。組合費は、無料から始まり、毎月500円以上かかる場合もあります。

一人親方、労災保険への特別加入の手続き方法

労災保険への特別加入に関しては、都道府県の労働局長から承認を受けた一人親方などを特別加入団体として、事業主とします。労災保険への特別加入の手続き方法は、下記の2つです。

  • 初めて加入する場合
  • すでに承認されている場合

初めて加入する場合

中小企業主等が加入を考える場合、以下の2つの要件を確認しましょう。

  • 労働者に対して労災保険の関係が確立されている
  • 労働保険の事務処理を労働保険組合に委任している

これら2つの要件を満たし、都道府県労働局長からの承認を得る必要があります。労働局長の承認は、申請日翌日から30日以内かつ、申請者が加入を希望する日になります。

手続きには、特別加入申請書を、労働基準監督署長を通じて労働局長に提出します。この申請書には、加入を希望する人の事業内容、職務経歴、希望賃金などの記入が必要です。また、特別加入申請書の提出は、労働保険事務組合を通じて行わなくてはなりません。

すでに承認されている場合

次に、特別加入が既に認められている事業の場合の手続きについてです。以下の状況になった際には、労働保険事務組合を通じて、特別加入に関する変更届を都道府県労働局長に提出する必要があります。

  • 新しく事業に従事する人が現れたとき
  • 新たに事業主になった人がいるとき
  • 既に特別加入を認められている人の事業内容や名前が変更になったとき
  • 既に特別加入を認められている人のなかで、特別加入の資格を満たさなくなった人がいるとき

仮に災害が発生した後に「特別加入に関する変更届」を提出したとしても、すでに発生してしまった災害に対する給付は対象外となります。また、1年間で労働者を雇う日数が100日未満の場合は、中小企業主として認定されません。

ただし、一人親方等や特定業務をする者の加入資格を満たす場合は、それぞれに対して加入が可能となります。

加入時の健康診断に関して

一人親方が労災保険に加入するときには、業務の種類に応じて加入時に健康診断が必要です。ここでは、下記の内容を解説します。

  • 必要なケース
  • 加入が制限されるケース
  • 手続き方法

必要なケース

下記の表に記載されている業務に、従事期間を超えて業務を行った場合には、労災保険加入の申請を行う際に健康診断を受ける必要があります。

【加入時健康診断が必要な業務の種類】

特別加入予定者の業務の種類 業務に従事した期間 必要な健康診断
粉じん作業を行う業務 3年以上 じん肺健康診断
振動工具使用の業務 1年以上 振動障害健康診断
鉛業務 6か月 鉛中毒健康診断
有機溶剤業務 6か月 有機溶剤中毒健康診断

加入時健康診断を受ける理由は、特定業務の使用履歴により、労災加入前にご本人様の身体状況を確認し、異常がなければ通常どおり業務を行い、労災加入後に特定業務により身体に異常が発生したときに、ケガなどと同様に労災扱いをするためです。

特定の業務に従事した期間があるときは、初めに労働保険事務組合を経由して、特別加入時健康診断申出書を労働基準監督署長に提出します。業務歴から健康診断が必要であると判断された際には、特別加入健康診断指示書が提示されます。

もし、健康診断の必要がある場合には、指定された診断実施機関で、期間内に健康診断を受診しましょう。健康診断の実施費用は国が負担しますが、交通費は自己負担です。

加入が制限されるケース

加入時に健康診断を受けた結果、特別加入が制限されるケースがあります。

たとえば、特別加入予定者がすでに病気にかかっており、症状や障害の程度を確認し、一 般的に就労するのが難しく、療養に専念しなければならないと認められるときには、業務の内容を問わず特別加入は認められません。

ただし、特別加入予定者がすでに病気にかかっていても、症状や障害の程度が特定の業務からの転換を必要と認められる場合には、特定業務以外の業務についてのみ特別加入が認められます。

特別加入をした後でも、特別加入前に病気が発症、または加入する前の原因により発症したと認められた場合は、保険給付を受けられないケースがあります。

手続き方法

特別加入時健康診断申出書が、労働保険事務組合によって管轄の労働基準監督署に提出され、健康診断申出書の業務歴から判断して健康診断が必要と認められると、所轄労働基準監督署長より、特別加入健康診断指示書が郵送交付されます。

特別加入健康診断指示書に記載された期間内に、あらかじめ労働局長が委託している診断実施機関のなかから医院を選び、加入時に健康診断を受診してください。依頼書は、診断を実施する機関に提出します。

健康診断を受診後、医院から健康診断証明書が作成され、監督署長に提出されます。じん肺健康診断を受けた際には、医師が見た結果、じん肺がないと認められた場合を除き、健康診断証明書にエックス線写真の添付が必要です。

健康診断の証明書を提出しなかったり、業務内容・業務歴などに虚偽の申告をしたりした場合には、保険給付が受けられない場合がありますので注意が必要です。

労災保険の補償対象となる範囲

業務や通勤により災害を被った場合に、一定要件を満たすときに労災保険から保険給付が行われます。労災保険の補償対象となる範囲は、下記の3つです。

  • 業務災害
  • 複数業務要因災害
  • 通勤災害

業務災害

業務災害とは、労働者の業務上でのケガや病気、障害または死亡をいいます。業務時間内でも、業務に関係のない私的な行為によるケガの場合は、業務災害に該当しません。

たとえば、下記のケースでは業務災害とは認められていません。

  • 就業時間前後や昼休みなど、業務をしていない場合のプライベートな行為での負傷
  • 業務中に従業員といさかいになっての負傷
  • ランチで外出したときの負傷

一方で、業務災害と認められ、保険給付が行われる主なケースを紹介します。

  • 工場で作業中にベルトコンベヤーに指を挟まれての負傷
  • 会社の車で取引先に行く途中での事故
  • 上司による嫌がらせや仕事上のストレスにより、うつ病と診断

一人親方は、業務災害と認められるケースについて確認をしておきましょう。

複数業務要因災害

複数業務要因災害は、複数事業労働者(※1)の2つ以上の事業を要因とする傷病などをいいます。対象となる傷病は、精神障害や脳・心臓疾患などです。複数の作業場での業務による負荷を総合的に評価し、労災として認定するかを決めます。

下記のような方が複数事業労働者になります。

  • 1社と労働契約関係にあり、ほかの就業について特別加入している
  • 複数の就業について特別加入をしている

一方で、下記の場合は、複数事業の労働者に該当しません。

  • 労働者として就業しつつ、同時に労働者以外の働き方で就業しているもの
  • 転職や複数の事業場に同時に使用されていないもの

(※1)事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者

通勤災害

通勤災害とは、通勤により被ったケガ、障害または死亡をいいます。労災保険における通勤の移動は、下記のとおりです。

  • 住居と就業の場所との間の往復
  • 赴任先住居と帰省先住居との間の移動
  • 就業の場所から 他の就業の場所への移動

たとえば、寄り道をして合理的な経路から外れたり、経路の途中で通勤と関係のない行為をしたりした場合には、その後の移動は対象外です。コンビニで日用品の買い物をした後に、通勤経路に戻った場合には、通勤と認められます。

一方で、映画館に入って映画を観る行為は認められません。日常生活上必要な行為であり、日用品の購入などやむを得ないケースは、例外として認められています。

出典元:厚生労働省ホームページ内の『特別加入制度のしおり〈中小事業主用〉』

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-5.pdf

まとめ

本記事では、一人親方が従業員を雇う場合の労災保険の切替手続きについて詳しく解説しました。

一人親方として働いてきた人が、年間100日以上にわたって従業員を雇用する場合には、加入している労災保険を脱退し、保険の種別を中小事業主に切り替える必要があります。業務災害、通勤災害が起きてしまった場合に、労災保険に加入しているかが重要です。

親方プラスでは、一人親方労災保険を軸として建設業一人親方の安全衛生、福祉の推進を目的として活動しています。労災保険番号を即日発行でき、月々4,980円のみで初期費用が安いので加入しやすいです。※初回は2ヵ月分をお支払いいただきます。

急な労災保険加入にお困りの一人親方様は、ぜひ親方プラスに相談してみましょう。

投稿者プロフィール

一人親方労災保険連合会 浅井淳平
一人親方労災保険連合会 浅井淳平代表理事
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
『建設業界を元気にしたい!』そんな思いで建設業に従事する方々が抱える問題点や悩み事に少しでもお役に立てれば幸いです。
【略歴】
・2011年 某外資系保険会社に入社
・2013年 労災保険特別加入団体の運営を開始
・2016年 大手生命保険会社100%出資代理店へ転身
・2024年 一人親方労災保険連合会【親方プラス】を設立 現在に至る
【趣味・特技】
キャンプ、つり、スキー、サッカー、ゴルフ…etc
 
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