下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律の成立について
会員および関係各社 様
日頃は、一人親方労災保険連合会《親方プラス》をご愛顧くださり誠にありがとうございます。
さて、この度令和7年5月16日付けで公正取引委員会・中小企業庁より表題の法律の成立に関する発表がございましたので、その内容についてお伝えいたします。
国会の審議状況
第217回国会
令和7年4月11日 衆議院 本会議 趣旨説明・質疑
4月11日 衆議院 経済産業委員会 趣旨説明
4月16日 衆議院 経済産業委員会 質疑
4月18日 衆議院 経済産業委員会 質疑・採決
4月24日 衆議院 本会議 採決
5月 9日 参議院 本会議 趣旨説明・質疑
5月13日 参議院 経済産業委員会 趣旨説明・質疑
5月15日 参議院 経済産業委員会 質疑・採決
5月16日 参議院 本会議 採決
法律の概要
<規制の見直し(下請代金支払遅延等防止法関係)>
(1)協議を適切に行わない代金額の決定の禁止(価格据え置き取引への対応)
対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明又は情報の提供をしないことによる、一方的な代金の額の決定を禁止する。
(2)手形払等の禁止
対象取引において、手形払を禁止する。また、その他の支払手段(電子記録債権やファクタリング等)についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止する。
(3)運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)
対象取引に、製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を追加する。
(4)従業員基準の追加(適用基準の追加)
従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設し、規制及び保護の対象を拡充する。
(5)面的執行の強化
関係行政機関による指導及び助言に係る規定、相互情報提供に係る規定等を新設する。
(6)その他所要の改正を行う。
<振興の充実(下請中小企業振興法関係)>
(1)多段階の事業者が連携した取組への支援
多段階の取引からなるサプライチェーンにおいて、二以上の取引段階にある事業者が作成する振興事業計画に対し、承認・支援できる旨を追加する。
(2)適用対象の追加
製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を対象取引に追加する。また、法人同士においても従業員数の大小関係がある場合を対象に追加する。
(3)地方公共団体との連携強化
国及び地方公共団体が連携し、全国各地の事業者の振興に向けた取組を講じる旨の責務と、関係者が情報交換など密接な連携に努める旨を規定する。
(4)主務大臣による執行強化
主務大臣による指導・助言をしたものの状況が改善されない事業者に対して、より具体的措置を示して改善を促すことができる旨を追加する。
<「下請」等の用語の見直し(下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法等関係)>
用語について、「下請事業者」を「中小受託事業者」、「親事業者」を「委託事業者」等に改める。また、題名について、「下請代金支払遅延等防止法」を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に、「下請中小企業振興法」を「受託中小企業振興法」に改める。
施行期日
令和8年1月1日(ただし、一部の規定は本法律の公布の日から施行。)。
一人親方に与える影響について
元請事業者から仕事を請け負って現場に出る一人親方にとっては今回の法改正は追い風となりそうです。
下請代金の未払いについては今に始まった話ではなく、長年の問題点で一人親方として長年従事されている方なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
そこにようやくメスが入る形となり、元請事業者からの下請(一人親方)に対しての支払いは、必ず現金で60日以内に支払われなくてはならいものとなりました。
建設業界に限っていえば、元請事業者がここ数年の物価上昇に伴うコスト上昇に見合わない価格を一方的に決めたりするなど、上昇したコストの価格転嫁について不当な取引が散見されるため、適正な価格転嫁が行われる取引環境を整備することを目的として今回下請法の改正が行われた背景があります。
これにより一人親方にとって今後は適正な価格や処遇にて仕事を請け負える環境が整備されていくことが期待できます。
元請事業者による義務および禁止行為
- 親事業者の義務:発注書作成・交付・保存・支払期日の決定等
- 親事業者の禁止行為:受領拒否・支払遅延・減額・返品・買いたたき等
まとめ
今回の法改正は、発注者・受注者間の対等な関係に基づき、事業者間において価格転嫁及び取引の適正化を図るため、本年3月11日に国会に提出した「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」は、令和7年5月16日に参議院本会議において可決、成立したものです。
これによって、下請けを使用する元請事業者は下請事業者(一人親方等)に対して下請け法を遵守した契約内容および契約方法にて適正な価格にて取引を行うことが義務付けられました。※違反した場合は、行政措置のほか、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
立場の弱い一人親方はこの法律が施行されることで、適正な処遇の改善が期待できます。
ぜひ、この法律を理解したうえで正しい契約形態のもと、適正価格にて仕事を受注していただければ幸いです。
【法律説明資料】公正取引委員会HPより引用
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投稿者プロフィール

- 代表理事
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いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
『建設業界を元気にしたい!』そんな思いで建設業に従事する方々が抱える問題点や悩み事に少しでもお役に立てれば幸いです。
【略歴】
・2011年 某外資系保険会社に入社
・2013年 労災保険特別加入団体の運営を開始
・2016年 大手生命保険会社100%出資代理店へ転身
・2024年 一人親方労災保険連合会【親方プラス】を設立 現在に至る
【趣味・特技】
キャンプ、つり、スキー、サッカー、ゴルフ…etc
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